ん?青いとは言え、所詮はくっくだな?

FF(オン)とMH2(オフ)同時進行中。頭こんがらがってる!

【故郷の姉さまへ:ヴァナメルからの手紙】
あいも変わらずなメルです。姉さまお元気でしょうか。
おぼろげな第一目標でもあった「鋼鉄銃士隊正式鎧」も着れるようになり、一人前の戦士の証、アーティファクト「ファイターアーマー」にもゆっくりですがも少しで手が届きそうです。そんなこんなで修行したり特別なモンスターを倒したりと近頃はちょっと慌しく過ぎて行きますが、AFを揃いで着れるようになったらもう一度大事な人とゆっくり世界を見て廻ろうと思ってます。
そうそう、ちょっとだけ無駄使いをして鎧を買いました。アルミという希少金属を使った鎧で、はっきり言えば見た目だけの鎧です。金額を言えばきっと姉さまは怒ると思うけど…コツコツとお金を貯めて買ったこの鎧はメルが頑張ってきた証のようでちょっとだけ誇らしく思ってます。
世界を見て廻る時はきっと姉さまの元にも顔を出そうと思ってます。メルの大事な人と一緒にお気に入りのアルミの鎧を着て。

【ミナガルデのみんなへ:ドスメルからの手紙】
住み慣れたミナガルデ、みんなの元を離れたのはついこないだのような…だけど新天地ジャンボ村に到着してもうどのくらいが過ぎたのかな?今は何度目かの寒冷期を迎え夜風はヒンヤリとして…正直独り寝る時は少し寂しいです。あ、でも村の人はみんないいひとです。念のため。
ご存知のようにもう一度「ハンターとは何か」を独り考えてみる…なんて偉そうに言って装備も武器も、それに皆も全て置いて、持ってきたのはこの体一つ。あの時みんなとても心配してくれたけどまた初心に戻ってキノコなんかを集めてはなんとか生活してます。
小さなジャンボ村ですが村長さんの熱気と言うかパワーは凄く、どこそこに出掛けては村を大きくしようと頑張ってるみたいで、その一環として腕の立つ(←ここポイントですよ)ハンターとして雇われた訳です。ジャンボ村は小さいけど何故かミナガルデには無い武器が揃ってて、ふと小さな武防屋さんに並んでいた「弓」を主に使ってます。
最初はその形状の面白さだけで手に取った「弓」だったけど自分で思ってた以上にメルにはしっくりときてるように思えます。
キノコ狩りばかりとは言え曲がりなりにもモンスターハンターのつもりなので機会があればちゃんとモンスターも狩ってるんですよ。ジャンボ村の周囲に住まうモンスター達はミナガルデよりも多種多様。石を投げればランポスにぶつかると言われるランポスはもちろんのこと、ドスランポスにドスファンゴ、あ、これファンゴの大きいやつです。それに見たこともない蟹や猿のようなモンスターとも戦いました。海沿いの密林地帯は見晴らしも良くぼや〜っと見てたら背後から叩かれたって感じなんですけどね。
そえばメルの宿敵…とは言いすぎですがイァンクックも仕留めたんですよ。赤いのと、それに青いのも。ミナガルデほどに亜種の青は珍しくないらしく、今だ村の付近しか行けないメルでも逢う事が出来ましたよ。
百に届くかと言うくらいに狩ったクックですがジャンボ村に来て初めて遭遇したクックを見て、ココット村で初めて対峙したクックのことを思い出しました。あの時のように林の影からいっちゃんやサンクがポンと飛び出してくるんじゃないかな?なんて思ってちょっと懐かしく…そんで独りである事を寂しく感じました。あ、これ泣き言じゃないです、うん大丈夫。独りでもちゃんと狩りは出来たもの。
まだ「ハンターとは何か」の答えは見えません。だけどこの生活はとても性に合ってる事だけは感じます。またここでもみんなと狩りが出来ればいいなぁ…なんて思いながら。

追伸:
村長さんが言ってたんですがジャンボ村近郊の砂漠へのルートが開けたみたいです。さっそく準備を整えメルの新しい武器「ハンターボウII」を担いで狩りに出掛けてきます。また手紙書きます。それまでお元気で。

クリスマスイブイブ。

 まあ風物詩なのでクリスマス小話。今年は各地で雪も降ってるみたいだし。そこんとこどーなのよってな感じ。てことで前回のがいざめる小話完結編じゃなかったのかというつっこみはナシの方向で。一日早いけども良いクリスマスを〜…なんてな〜w

(クリスマス小話:スノウバウンドパーティ)

「こぽこぽこぽ…」

 …なんだろ…

 目を覚ましたメルは布団の中で隣の部屋から聞こえるその音をぼんやり聞いていた。

 …どうしたんだっけ?

「カタン…コト…コトン」

 …あついなぁ…あ…そか…熱が出て寝込んでるんだっけ。

 長いまどろみの中から抜け出そうとメルは上体に力を入れるが熱のせいかすぐに力が抜けていく。少し起きようと試みるも上手に起き上がることが出来ず、結局諦めた。本当なら楽しいクリスマスになるはず…だったのに。
 
 ここはメルのアパート、今はメルと十六夜のアパートであるが。その寝室のベットの上、一人で寝るには広すぎるし二人で寝るには少し手狭な…だけどそれが嬉しくもあるセミダブルのベットの上で一人メルは思う。
 今日はクリスマスイブと言うこともあって、街中にぎやかなクリスマスソングが流れているはずで。美しくライトアップされた街は一年に一度だけ、どこか華やかでにぎやかでそして少しだけ厳かでロマンチックな表情を見せているはずで。本当なら今頃はなじみの仲間達と山猫亭で大騒ぎしてるか…それとも華やかな街を寒いけど心まで寒くならないよう腕を組んで歩いてるか、もしくは居住区を覆う天幕の中心、そこに建造された新しい展望室でゆっくりとラグオルの反射光を眺めながらの素敵な夜を過ごしているはずなのに。どうして今日になってこんな事に。とは言え数日前よりその予兆はあったのに養生をしなかったのは自分である。だらしのない自分自身を恨めしく思いながらメルは大きく溜息をついた。
 隣の部屋には当然ながらヒトの気配、同居人十六夜の気配はある。だけどどこか申し訳なく思うメルは目を覚ました今も声を掛ける訳でもなくただその音にだけ耳を澄ませていた。

 カチャカチャとなるのはいっちゃんのお茶碗と箸の音。んふ、今日みたいなクリスマスでも和食だ…。コト…今の音は?…そだお気に入りの湯飲みをテーブルに置いた音。今晩は何を食べてるんだろ。てれびの音はなにかバラエティ番組かなにか。時よりてれびからの笑い声に合わせてクスクスと笑う声。出来るだけ声を抑えた笑い声。番組がヒートアップするにつれ、てれびからの音が少し大きく聞こえる。そのたびにリモコンでヴォリュームを下げる音。ピッピッピッ。少し静かになる。きっとこっち向いて様子を伺ってる。寝ているメルを起こさないように。ダイジョブ、メルは寝てるんだから、物音立てないんだから。そうしてるとまた意識はてれびや食器のほうへ戻る。しばらくそれの繰り返し。そして食事を終えたいっちゃんはキッチンへ。しばらく聞こえる水の音、カチャカチャと食器の奏でる音と優しい水の音…。

 メルはその音を聞きながら姿こそ見えないがそこに十六夜の存在を感じ、それだけで少し幸せな気持ちになった。ぽかぽかとするのは熱のせいだけではない。クリスマスらしく楽しむ事は出来なかったけど、だけどそばにその存在を感じるこれ以上の喜びがあるだろうか。ゆっくりと目を閉じそのいとおしい「十六夜の音」をメルは楽しむことにした。まるで華やかな街に立ち流れるクリスマスソングにそっと耳を傾けるように。
 
 …いつのまにか少し眠りに入っていたのだろうか。気が付くとまったく物音が聞こえない。あまりに静か過ぎるのもまた眠れない。一抹の不安を感じ目を開けるとそこには十六夜の姿があった。

「ありゃ…起こしちゃった?…おはよ〜調子はどぉ?」

 チャプン!起こしたついでにとメルの頭の下にひいていた氷まくらを取り替えながら十六夜は微笑む。

「クリスマスなのに…災難だねぇ。」

 サクッ!せっかくだからケーキ一口だけ、とスプーンで差し出す十六夜はやっぱり微笑む。
 
「ああ、私?私は災難だなんて思ってないよ。寝込んでも無いしね?どして災難なの?…ここにこ〜して一緒に居るのに?」

 パン!ケーキのオマケに一つだけ付いてきたクラッカー、案外大きな音するね、とメルをまっすぐに見つめながら十六夜は最上級の笑顔で微笑む。

 ぐわんぐわんとメルの頭の中を十六夜の奏でるクリスマスソングが廻りつづける。熱がまた数度上がったんじゃないかと思うくらいメルの頬は熱くなる。そして鼓動はどんどん高鳴っていく。

「ズルイなぁ…いっちゃんは。めるはいろんな音でいっちゃんを感じることが出来るのに。いっちゃんは感じさせてくれるのに。」

 意味がわからず十六夜の頭の上に「?」マークが浮かぶ。メルは突然ぐいと十六夜の頭を抱え込むと自分の胸に押し付ける。

…どきどきどきどきどきどきどきどきどき…

 十六夜の耳に入る音はメルの高鳴る鼓動。火照った体で響くその力強い心音は十六夜が思うメルの力強さそのものではあったが。

「…いっちゃんの前だとめるはこの音しか出せないんだもん。」

 ゆっくりと更け行くクリスマスイブ。気温はいつもより低めでどんよりとした空模様、もしかしたら夜更けすぎには雪が舞い散り、素敵なホワイトクリスマスになるのかもしれない。
 しかしながら熱に犯されたメルは0時を待たずに…そうホワイトクリスマスを待つことなくきっと深い眠りにつくだろう。だけどその時にこそサンタクロースは現れるのだ。そう眠りについた良い子にだけ彼は大事な大事なプレゼントを配るのだから。
 
 『さぁ良い子のお嬢さん欲しいものはなぁに?』

 …いいえ、メルはなにもいりません。ただ…ずっとこのままおそばに置かせて。ずっとこのまま十六夜のそばに。

 雪がしんしんと降り続く。ゆっくりとゆっくりと降り続く。降り続く雪のひとつひとつが幸せでありますように。ラグオルに舞い降りる全てのハンターズに降り続く幸せでありますように。

I wish ALL HUNTERS or GUARDIANS?! a merry Christmas !

PSOからPSUへ。

 なんとなく時期を外しちゃった感もあるけど…PSO小話の一区切りで以前に書いて表に出せなかった小話をひとつ。PSU発売も近いって事で?

(けろ小話:My First Love)

「…ただいま戻りました。」

 肩に積もった粉雪を静かに払いながら尻尾同盟19代目盟主代行、大蛇丸満月が静かに奥の院入り口に立つ。幼い頃我が家として慣れ親しんできたこの屋敷に戻るのはいつ以来だろう?満月は懐かしげに首を巡らすとそこには母メルの姿があった。

「お帰りなさい。盟主代行。息災そうでなにより。…でも少し痩せた?満月?」

 静かな微笑みを携えたメルは久しぶりに逢った我が子満月を愛しげに見つめると昔そのままの子供部屋へと満月を通した。

「メル母様、盟主様…ルナルはもう?」

 人払いされた奥の院、この部屋にはメルと満月しか居ない。満月は盟主代行の顔からメルの娘の顔に。重苦しい礼服を脱ぎ昔のようにゆったりとした部屋着に着替えると満月はそう問い掛けた。

「…十六夜母様の元に。早く貴方もご挨拶してらっしゃいな。」

 少し寂しげに見える母に見送られもう一人の母十六夜の部屋へ向かう満月。メルは何も言わずにその後を静かに追った。

「…でね、盟主の立場を利用してゴリ押ししちゃったら”謹慎処分”なんだってさ。なんでも盟主でそんな事されたのは私が始めてなんだって。いざよ母様だってけっこう無茶してたはずなのに、初めてが私って言うのが納得出来ないよねぇ…。」

 病床に伏せる十六夜は布団から上半身だけ起こしルナルの話をニコニコと聞く。満月はその姿を見て少しほっとする。歳老いた十六夜にとっては命に関るようなやがて死に至る病、そんな病に犯されていると聞いていた。心配はしていたが思っていたよりもずいぶんと元気そうに見える。安堵の表情を浮かべた満月の表情に気付くと十六夜はにっこりと微笑んだ。

「お帰りなさい。満月ちゃん。盟主代行お疲れさま。」
「みづ〜。いろいろごめんね、ん〜やっぱ盟主変わろうよ?」

 ルナルとは常に行動を共にしていたが近頃はルナルの行動に対する後処理に追われる満月、盟主よりも盟主らしいと言われる盟主代行業務をこなす事が多く、なかなかゆっくり出来ずにいるという。そのためルナルに逢ったのも数日振りの事であった。

「いざよ母様、ただいま戻りました。遅くなって申し訳ありません。」

 まずは母十六夜に頭を下げてそして傍らに腰を下ろす。丁度ルナルとは反対側へ十六夜を挟み込むような位置だ。

 「…盟主様、ご冗談を…なんて、ルー?そんなこと言わない。」

 満月も盟主代行として威厳も持ち合わせていたが少し表情を緩めて優しく、しかしルナルを睨み付けたその姿は昔のまま、仲の良い姉妹のままだった。

「満月ちゃん、ルナルちゃんも頑張ってるみたいよ?ルナルちゃんなりに。」

 十六夜が助け舟を出すとルナルは「そーだそーだ」とまるで人事のよう。

「確かにね。ルー…盟主さまのやってる事は間違ってないけど、やり方ってのがあるよ。ストレートにぶつかるばかりだといずれ…。」
「むふふ、まあまあ今日はそのくらいにして。ほら大きな声を出すと月詠ちゃんが起きちゃうから。」

 満月は十六夜に抱かれてすやすやと眠るルナルの娘、月詠に気付くと口を紡いだ。満月、ルナルそして我が胸の中で眠る孫の月詠を愛おしく眺める。名残惜しそうに十六夜は月詠をルナルにゆっくりと手渡す。そしてゴホンと一つ咳払い。二人は十六夜の言葉を待った。

「満月ちゃん、ルナルちゃん、よく聴いて。」

 四人を離れた場所から見ていたメルも静かに十六夜に寄り添うと穏やかな表情で二人の娘を見つめる。

「…今日、もうすぐ母は旅立ちます。」

 たしかに遠くない将来、病に伏せる十六夜が旅立つ日が来る事を予感していたとは言え突然の告白に満月は驚きの表情を見せる。ルナルは下を向き、既に大粒の涙を流しているようだった。

「…ルナルちゃん?そんな哀しい事じゃないと思うよ。これが自然の流れ、誰だって生きてる以上いつかは死ぬ。私は充分生きたよ。皆のおかげでほんとに楽しく生きてこれた。もう生きることに未練がない…なんてそんなことは言わないけどやれる事はやったし、ほんとにいい人生だった。」

 寄り添うメルを見る十六夜は十六夜を見つめるメルの瞳を見てゆっくりと頷いた。

「二人は私が、メル母様と生きてきた証。未来に繋がっていく私達の証。いつもどこに居ても大切に思ってるよ。…なにも言わなくても二人はちゃんと分ってくれてたけど今日だけは言葉にさせてね。二人とも…これからも強く、そして優しくありなさい。ただ強いだけじゃなく強く生きるために知った弱さを忘れずにいなさい。涙を流したい時は流してもいいけどちゃんと自分の腕で拭う事を忘れないこと。そしていつまでも姉妹仲良くね、私達の証に留まることなく前に進んで、そしてまた新しい貴方達の証を築いてください。」

 満月は十六夜から顔を背けず、ただ涙だけが頬を伝って落ちる。ルナルは月詠を抱きしめて肩を静かに揺らしていた。

「ルナルも母になったからつぎは満月も母になりなさい。私がそうであったように子供に救われる事ってほんとに沢山あるのだから。そして二人の母であるメル母様を私の分までこれからも助けてあげて。ほんとは今でも寂しがり屋なんだからたまには帰って傍に居てあげて。」

 それを聞いたメルは穏やかな表情のまま静かに口を開いた。

「…いっちゃん?メルは大丈夫。でも一つ我侭を言わせて貰えば娘達も忙しい事だし、も少しいっちゃんが傍に居てくれないかな?」
「ほんとはそうしたいとこなんだけどね…。うふふ。」

 いつものように二人は語り、そしていつものように笑いあった。

「…どおしてそんなに二人は笑えるの?…哀しくないの?」

 満月は二人の母に問い掛ける。ずっと一緒に居た二人、離れる事が哀しくないはずがない。それは分っていたのについ口にしてしまった。しかし二人の母は何も答えず静かに微笑を浮かべるだけであった。しばらくは娘らの嗚咽だけが響く。庭の鹿脅しが奏でる打音と共に。十六夜は二人の娘の頭を順番に優しく撫ぜ、月詠の頬に触れる。そして最後のお願いになるだろう言葉を発した。

「愛しい二人の娘達。ちょっとメル母様と二人にして貰っていいかな?」

 母の旅立ちはすぐそこに来ている事を二人は感じ取る。満月はルナルと顔を見合わせ改めて並び座ると一緒に頭を下げた。

「良き旅立ちになりますように。…お母様ありがとうございました。」

 そして満月とルナルは静かに部屋を後にした。

「いっちゃん…ちょっと横になる?」

 メルは十六夜の背を優しく支えると横になるように促す。十六夜はゆっくり首を横に振るとこのままでと呟いた。十六夜は静かに腕を伸ばすとメルの前髪に触れる。

「綺麗だね。めるちゃんの髪は。こんな素敵な太陽みたいな色は他に無いね。」
「そかな?いっちゃんの深い蒼…ちょっと白髪が混じっちゃったけどそれだって凄く素敵だよ。歳を取ってもさ、その時々のいっちゃんが一番素敵だね。」

 表情には出さなかったがメルは歳を取りにくい自分が恨めしいと思った。十六夜と同じように歳を取れたなら…と今日以上に思った事はない。そんな気持ちを見透かしたのか十六夜は少し本音を漏らす。

「正直言うとさ一緒に連れて行っちゃおかな…なんて思わなくもないんだけど、それは駄目だよね。うん、やっぱりめるちゃんはこれからも二人を見守ってね。」
「うん。てかもう二人は大人だし…あ…ごめん、今日は泣かないって約束だったけど…。」

 メルの穏やかな表情のその頬に一筋の涙。頬に触れる十六夜の手にぽとりと落ちる涙。

「ん。またしょうがないなぁ。ずっと泣き虫のままなんだから。」

 少し寂しそうな顔で十六夜はメルの涙を拭う。

「大丈夫だよ。いつかまた会えるから。ちょっとだけ旅に出るけどまたきっと戻ってくるから。それまで寂しい思いさせちゃうけど許してね。」

 フッと体の力が抜け十六夜は寄りそうメルの肩に頭を乗せる。

「ほんと素敵な髪だね…。」

 力なく腕を伸ばしてメルの前髪にもう一度触れる十六夜。

「…んじゃ、これだけ持って行って…。」

 強く十六夜を抱きしめるメルの髪からゆっくりと色素が抜けていく。鮮やかな金髪は十六夜の触れた前髪の一房を残し真っ白になる。全身全霊を掛けた最後のレスタ。少しだけメルを抱きしめる十六夜の腕に力が戻る。そして最後の口付け。

 「愛してます、ありがとう…私の”メル”。また逢えるその時まで…。」

 音もなく静かに雪が降り積もる。世界を白く白く染めて。色を無くしていく世界でもその瞳に焼きついた太陽の欠片、黄金色の光の流砂。振り向けばいつもそこにあった黄金色の光はこれからもきっとそこにあるのであろう。確かに生涯を掛けて見守っていた光、だけどその光に自分自身も包まれいつも見守られてもいたのだ。そう最後の時を迎える今この時も。突然全ての色がその黄金に染まる。もう何も見えなく何も感じない…だけど…満足そうな表情を浮かべて笑顔のまま静かに十六夜は旅立った。

ヴァナだけでなくもはんも楽しいよ。うんうん。

【ミナガルデ狩猟記:メル(特別読み切り小話編)】

 尻尾も翼爪も切り落したと言うのになんてタフ。追い詰めたと思ったらすぐに場所を変える知能の高さ。たぶん金冠サイズ、少なくとも銀冠の上。んむ、桜レイアめ、伊達にそこまで大きく育ったわけじゃないって事…だね。
「メルちゃん、もう時間が無いよ。」

 んも〜。無駄に大きいんだってば。近付けば飛び立っちゃうし、も〜ウザい。も〜。押しては引くなんて竜には百万年早いってば。しかも逃げてる訳じゃなくたぶん戦略的撤退。このサイズでこの狡猾さ。まったく…も〜いや〜。
「うん、了解。とにかくギリギリまで諦めずいこ!」

 メルとイザヨイ、いつものようになにげに二人で出掛けたクエスト、リオレイア討伐。たぶんに楽勝、用意周到、準備万全で臨んだはずだった。ちょっとした誤算は相手が少しばかり大きくてそして少しばかり貴重種だった事。

 お互い消耗戦、じわじわと体力の削り合い。その背に背負う朱色の竜刀が煌き、幻の軽弓タツジンボウガンが火を噴けば、その巨躯で群がるモノを吹き飛ばし、距離があると見れば巨大な火球で焼き払った。場所を変え、方法を変え、何度も何度も切り結ぶ。メルとイザヨイの二人は死力を尽くして竜を追い竜に追われた。
 時には戦線を離脱してアオキノコと薬草、それにハチミツを落として回復薬Gを現地調達したりもしたが…。

 ミナガルデより西へ伸びる数�の森、そこで繰り広げられていた二人と一頭の戦い。真上にあった太陽がゆっくりと夕日へと変わり、沈んでいく。雲ひとつ無い青空に朱が混じり、混じった朱は空全体を支配していく。そして静かに闇は訪れつつあった。大きく羽ばたいたリオレイアの桃色の巨躯もその闇にゆっくりと飲まれていく。最後に一吼えするとあざ笑うかのように旋回してそして消えた。
 その姿を臨戦体制のまま仰いでいた二人。飛び行くリオレイアを追い刹那また走り出そうとするメル、しかしすぐにそれは諦めた。そのメルの姿を確認するとボウガンを肩に担ぎ直すイザヨイ。二人は悔しげに呟き、そして闇を睨んだ。
「…これ以上は駄目だね。もう追えない。」
「くやしぃ…今回は失敗…だけど。次、がんばる。」

 静かなる闇の訪れはヒトの時間の終わりを知らせる。そしてそれはヒトであるハンターにとってクエストの失敗を意味していた。しかし一度や二度の失敗で諦める事はない。その命の灯火がある限り闇は払うことが出来る、何度でも挑戦は出来るのだから。

…いやクエスト失敗しただけなんだけどね(笑)あ〜いっちゃんのクロオビだっけ?タツジンだっけか?

欠けた月のメル

「貴方の輝きはどこか一部が欠けているようだね。どうだろう?僕にその欠けた部分を補わせてみては?」
今よりもずっとずっと未来のお話。たくさんの時が流れて環境もヒトも何もかも変わった世界でメルは妖艶に微笑む。微笑みのその向こう側、大きな大きな満月を指差し男は続ける。
「今宵は満月。あんな風にきっと貴方も輝けると思うのだが?」
「どうして満月のように輝かなければならないの?」
メルは微笑を携えたまま男に問い掛ける。一房だけ残る金色の前髪を撫でながら。
「欠けた月になど魅力はないでしょう?」
そうかしら?メルは「酒乙女」を煽るとその深蒼の瞳に満月を写し寂しげに、しかしどこか嬉しそうに呟いた。
「私は貴方の望む月にはなれないようね。私の月は少し欠けているくらいがちょうどいいの。そうね…明晩の月夜、”十六夜”の月で。」

まあ小話にしては短すぎるのでフリトにしとこ…ってなもんです。今日は台風待機モードだったんですが上手に逸れたのでなんて言うか、な~にもやらない一日でした。お通夜に行ったのと、あとMHはちょっとしたけどね。