はい、クリスマス小話。

降り始めた雪が白く白く街を染めていく。今宵だけは皆がそう望む12月の聖夜前日。
「雪は嫌いだし。積もってるとこ見てるだけなら好きだけど。」
「…いつかは溶けて…消えてしまうから。」
ベンチに座る少女、それを見つめる少女…二人。その姿はどこか寂しげで。

「あら?めずらしい。今日は一人なの?」
慌しい12月の喧騒の中で更に慌しい、だけどいつもの山猫亭。名物女主人のクエスラ(永遠の28歳ですわん)は、カウンターでその喧騒を眺めていたニューマンの少女、メル=フェインに声を掛けた。
「む、忘れようとしてた事をあえて言うなんて!酷い!」
少し頬を膨らませたメルは、しかし、すぐに笑顔になった。
「えへ、冗談だよ。今日は、いっちゃん古いお友達とお約束でお出掛け中で~す。だからお留守番で~す。」
それを聞いたクエスラは意外そうな顔で口を開く。
「へぇ…てメルちゃん、どうしたの?そんな聞き分けの良い事いうなんて!!」
クエスラは続ける。
「…基本的にメルちゃん、そんな時は『やだ~一緒にいてよぅ』とか言うのが売りじゃない?」
今度はほんとに頬を膨らませたメルが言い返す。
「むぅ、めるだってそこへんはちゃ~んとわきまえてるんだから。」
「わ…わきまえてる…ですってぇ?メルちゃんの辞書にはそんな言葉ないかと思ってたのに!」
クエスラは大げさに驚くフリをして、ペロリと舌を出した。
「ま、冗談はさておき、メルちゃんも少しだけ大人になったって事ね。んじゃ今夜は私がお相手…」
「ん、大丈夫。いっちゃん夜には戻ってくるから!…たぶん。」
メルはそう言うと突然席を立ち、帰ると告げるとまっすぐ扉に向かう。そしてくるりと振り向きウインクをひとつ。
「クエスラさん!…あえないじかんが、あいそだてるのさ!」
満足げにむひっと笑うとメルは颯爽と喧騒の街へ。
「…なんで今時期、ゴゥなの?…あとお勘定…。」
毎年レギュラー出演のクエスラも今年はこれで出番が終わったのであった。

店を出て見上げると雪…粉雪。みるみる歩道が白くなっていく。毎年きちんと天候管理公社は、この日、この時間に雪を降らす。一人で見る雪、二人で見る雪、どこか違うなぁ。ん…くえすらさんにあ~は言ったもののやっぱ寂しいなぁ。んや…待つ事を楽しむのも二人だからこそ。そう思ってめるは家路を急いだ。ん、なんだろうあれ?
「だから、別れましょ…そう言ってるんだし?」
一人は…ニューマン?金髪でロングで…どことなくめるに似てる?ていうかそっくりかも。
「承服出来ない。どうして今になって。納得の行く回答を要求する。」
もう一人は…あんどろいど…じゃなかった。近頃キャストって呼び方に変わったんだっけ?
「…回答なんかないし。…とにかく別れる、今すぐ!」
「いつもキミは…と言っても…今は興奮状態のようだね。とりあえず”今”は帰るよ。また落ち着いた頃に連絡する。」
おとこのこはおんなのこを置いて去っていく。あらら、今日みたいな日に痴話喧嘩…かな。ん~なんか冷静すぎるなぁ、おとこのこのほう。ちょっとおせっかいしちゃおっかな~。なんて。
「ねね?やっぱあんなだから嫌になっちゃったの?冷静すぎるのもやだよね?」
ニューマンのおんなのこ、近くで見るとやっぱめるにそっくり。もしかして…?ん~おんなのこもめるが自分に似てるって思ってるのかな。なんか鏡を見てるよう。
「なに?いきなり。すごい失礼だよ。キミ。」
「まぁまぁいいから!いいから!ちょっとそこでお茶しよ~。」
めるはおんなのこ、名前はレムって言うんだって。レムを引っ張って近くの喫茶店に入った。

なにげに入った喫茶店。向かい合って見ると自分で言うのなんだけどめるが二人居るみたい。まるで双子か、良く似た姉妹に見えたのかも?しばらくは自己紹介をしたり、そんな不思議な光景。そして、いきなり姉妹喧嘩を始めたように見えたのかも?
「だから!違うって。メルはほんとガキねぇ。別に嫌いになった訳じゃないし。」
レムは初対面であるめるにそんなことを言う。なんか失礼だと思わない?
「メルのほうがよっぽど失礼だし。まったくシリアスな場面で空気読みなさいよ。」
めると似たような顔してるのに、なんか大人風味?
「え~だって今さっき”もう別れる”っていうてたじゃん。こんな日にさ?」
だってそう言ってたもの。別れるってのは嫌いって事じゃ…ないのかな?
「だけど嫌いとかそゆんじゃないし。」
「え~意味わかんない。別れなくていいじゃん。なら。」
レムはふぅを息を吐くとひょいと首をすくめる。
「だからメルはガキだって言ってるわけだし。…こんな日に一人だし?」
むき~。めるは一人じゃないし!ってうつってるし…ってまた。
しばらくはそんな調子で。だけどなんか楽しい。レムも意外に楽しんでるように見えた。二人で、数が分からない程いくつもケーキを平らげて、どちらともなく、そして二人とも、ふと時計を見る。そろそろいい時間だ。そろそろ出ようか?とレムが席を立つ。
「ん!とにかく。好きなら!別れたりしちゃダメだよ!レム」
「まあ、いろいろと事情があるわけだし…ネ?オリジナルさん。」
おりじなる?レムはいったい何を言ってるのか、めるには良く分からなかった。

喫茶店を出て二人で歩く。そろそろいっちゃんが帰って来る時間。だけどレムの事がすごく気になる。レムも何か言いたそうな、そんな表情のまま雪の降り積もる公園の横。
「ん~今日、こうなったのも何かの運命なのかもだし。まぁいいか。メル、もうちょっといい?」
レムはそう言うと公園のベンチへ。屋根のついたそのベンチは、キチンと暖房されてて、日が沈んだ今も暖かいまま雪景色だけを楽しめるようになっていた。
「レム?さっきさ…。」
言いかけた言葉をレムが遮る。
「あ、うん。オリジナルって言った事?」
「うん。」
「見てわからないかな?メルは私のオリジナル。言うなれば私はメルのデッドコピーってやつだし。」
こぴ~って?さっぱりわからない。
「ただし…その性能までは無理だったみたいだけどね。」
レムが言うにはレムはめる、正確にはフェインシリーズ?を模倣して作られたニューマンらしい。どこの組織?企業?団体?かは言わなかったけど、このパイオニア2で。めるはそんな事がこの船で起きていることすら知らなかった。だけどショックは不思議と無かった。めるはそゆ生き物だって事は解かっていたから。だけどこの頃はその事を忘れていただけ。
「あは、そんな…めるなんて元にしたって…何も無いのに。」
「やっぱメルは馬鹿だし。ニューマンなら誰もが羨むのに。もちろん私もだし。」
そんな良い事ばかりでもないんだけどな。
「でも、オリジナル?のメル、思ってたよりもイイコでよかったな。高性能ってだけで、さぞイケスカナイやつだと思ってたしね。」
レムの顔はどこか寂しそうだ。たぶんめるもそんな顔。
「もう何人か居たんだけどね。私の姉妹、んでメルのコピー達。」
「あ、皆は?」
「ん。もう死んじゃったし。」
なんかとても哀しかった。見たこともないヒト達だけど。とても。ふいに涙が溢れ出した。
「なんか…ごめんね。レム。」
「泣かない、泣かない。メルが悪いんじゃないし。」
レムは凄く優しい笑顔、めるには真似の出来ない、だけどめると同じ顔で。
「あはは、ほんとイイコだし。まあ結果良かったんじゃないかな。コピーとは言えさ、メルとは違うレムというニューマンで過ごしてるのは間違いないし。」
「そうだメル?私の変わりって訳じゃないけど、キミさ、さっきのキャスト今夜どう?もちろん恋人としてさ?あんなだけどイイヒトだし。」
レムはめるにそう言う。もちろん答えはNO。大事なヒトはめるにだっている。
「そっか。んじゃ、やっぱしょうがないし。」
レムは降り積もる雪を見る。聖夜を待たずに振り積もる特別な雪を。
「メルは雪嫌い?」
一人で見る雪は嫌いだけど、今はレムと見てる雪…嫌いじゃない。
「私、雪は嫌いだし。積もってるとこ見てるだけなら好きだけど。…いつかは溶けて…消えてしまうから。」
突然ガクリと力無くうな垂れるレム。
「メルともこのまま別れようと思ったけど。ごめん、なんか力入んなくなったし。」
やだ。やだ。なんかその先は聞きたくない。
「…そろそろ時間が来ちゃうみたい。やだなぁ劣化ニューマンのこゆとこ。」
「だけど…最後にメルに逢えて、なんか運命感じちゃうね。ほんとに姉妹だったら…良かったのにね。」
差し出すレムの右手。公園に降り続く雪がその手の平に落ちては、溶けて消えていく…。

病院の待合室に座って呆然としてると、いっちゃんが迎えに来てくれた。
「めるちゃん!!…だいじょうぶ?」
少し青ざめた顔、病院に居るってだけ連絡したの…まずかったかな。
「ん、めるはだいじょうぶ。でもレムが…。」
「レム?だれだろ、めるちゃんの新しいお友達?」
お友達になれたかも、だけどもう…。

「やっほー!アナタがいっちゃん?へぇ美人さんだし、そのケはないはずだけど、ちょっとグッとくるし。遺伝子のせい?」
レムは激しく元気よくそして失礼な挨拶をする。
「やだ、メルってばまだ怒ってるし。」
めると同じ顔のレムに少々困惑気味のいっちゃん。カクカクシカジカで。
「なるほど、投薬の時間が来て倒れたレムさんを亡くなったと勘違いした?」
だって、なんかそれっぽい話してたしね?それにね…。
「あーちょっと意図的にそうしたとこあったし。ちょっと意地悪したくなるじゃないメルって。」
「ああ!たしかに!それ分かるかも。」
いっちゃん…なんかレムはむかつきます、めるは。
「まあ、でもあのまま公園で放置されたらほんとに死んでたし。そゆことでいいじゃない?」
不意に鳴る救急車の音、運び込まれるもう何人目かの飲み過ぎのヒト。そして…。
ちょうど0時、なんだかんだで、今、クリスマス。とんでもないサンタクロースの笑顔と共に。

皆様にとって良いクリスマスでありますよ~に!メリークリスマス!!


山猫亭風エピローグ的なもの
「なんか今年はいっちゃん活躍なかったね?話も全然クリスマスっぽくないし」
「てか当初は寂しげな話にしたかったみたいだよ、ほんとは出番もなかったらしい」
「あー死にオチで感動誘う技を使おうと?」
「そうそう、だけどなんかレム気に入ったらしいよ、もうヘタレだね。」
「ちなみにお二人さん、私MELをひっくり返してLEMでレム。すごく安易だし。」
はい、いらん世話です。

このエントリへのコメント

メルに比べて「どこでも居るフツーの女の子」っぽいレムたんハァハァ…自重するんだ俺!
降っても積もらず消える雪のように、死んでしまったレムの姉妹達に思いを馳せつつ。
きっとレムは、クリスマス当日には恋人と仲直り出来たらいいなぁ、と思っちゃった(笑)

2007年12月24日:月曜日 | 長物守

毎度レスポありがとございます。
どうにも微妙なお話でございますが〜w

2007年12月26日:水曜日 | けろ

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