聖夜も近いので。

久しぶりにクリスマスに向けての小話。
いちお世界観はPSO準拠です、そんな描写ないけど。
あと〜知らない人(主に宇わの空の方に向け)の為にざっくり登場人物紹介から。

【大蛇丸=フェイン=満月】
メルといざよのムスメ1号、PSOではレイマールぽかった。
幻星学園パイオニア2分校2年(ハンターズ養成コース)
【ルナル=フェイン=大蛇丸】
メルといざよのムスメ2号、PSOでは(途中から)ハニュエールぽかった。
幻星学園パイオニア2分校2年(ハンターズ養成コース)
【六道 空】
ミヅキ&ルナルの友人代表。リサイクル。ああ、あの子!って分かる人はマニア。
幻星学園パイオニア2分校2年(ハンターズ養成コース)
【ダンシ=エイ】
クラスメイト。まあ名前の通り適当さん。
【???】
謎の少年(設定なしもしくは未設定とも言う)


【え?これでクリスマス小話…なのか??】←タイトル

「……それでは良い休暇を、解散」
クリスマスイブの今日、待ちに待った冬期休暇に入る学生達。挨拶を交わしつつ早々に教室を後にするもの、別れを惜しむように他愛のない雑談にふけるもの、今からの遊びの計画を練るもの、それぞれに行動は違えど皆、たった今始まった休暇に心躍らせていた。
「ねぇ?ほんとに行かない?」
ソラ=リクドーは帰り支度をしている友人に声を掛ける。鞄に荷物を詰めるため視線を下に向けている友人、ミヅキ=F=オロチマルの視界に入るよう机の前にちょこんとしゃがみ込み、目だけを出す形で。
「うん、ごめん。今日はちょっと用事もあるし。ここんとこ忙しかったし家でゆっくりしたいしね」
「んも〜だいたいリクドーはさ、誘い下手なんだよ〜。ミヅ〜なんて騙して連れてけばいいのにさ。正直に言っちゃうんだもん『男子も来ます!』なんて」
話に割り込んで来たのはミヅキの双子の妹ルナル=F=オロチマル、仲の良い遊び友達のソラに不服そうな顔を向ける。
「いいじゃん、オロチマルはそゆの言っとかないと後が怖いしさ。あ、ルナルは参加でいいんだよね?」
「もちのろん!ソラ嬢よ、あたしゃヤツラにおごらせちゃおうゼって思ってますゼ」
「まぁ双子のおねぇちゃんが来ない言うてるのにアンタは……」
「何度も言うけど双子は一心同体なんて思ってるのはリクドーだけだってば」
「だいたいルナルが誘いなさいよ!姉妹でしょ!大事なおねえちゃんでしょ!」
「ミズ〜は頑固だから一度断ったらもう二度と駄目だよ、最初に断らせないのが大事なんだよ…よよよ」
帰り支度を済ませたミヅキはそんな二人のやりとりをしばし微笑ましく見つめていたが、ちらりと腕時計を見ると席を立つ。
「んじゃ先に帰るから。ルーはあましハメ外ししすぎない事だよ。お母様達は例によって今晩は居ないからって遅くなりすぎちゃ駄目だからね」
「あい了解、しかし、イベント事は二人で!絶対にブレない…恐ろしい親!」
ルナルは敬礼の姿勢のまま、教室を出て行くミヅキを見送る。
「ミズ〜?おねえちゃ〜ん?夜まで一人だけど寂しくない?」
「寂しくないって。ももまん食い過ぎるな?」
ルナルに手を振り、そのままミヅキはエレベーターへ消えて行った。
「あれ?オロチマル委員長は行かねの?ルナル来るのに?泣くやつ居るぜ、俺とか」
「んも〜男子Aってばベタねぇ」
「まぁそんな台詞だから男子Aなんだよねぇ」
ルナルとソラは顔を見合わせ、そしてやれやれのポーズ。
「俺はAじゃなくてエイだよ!そんなモブみたいな扱いすんなよなぁ……」
「オロチマルは基本、真面目だからアンタみたいなのはだいたい無理目でしょう?」
ソラはルナルに同意を求める、しかしルナルはちょっと曖昧な表情をした。
「ん〜男子Aは無理、妹としても無理、でも『真面目』は間違ってるかなぁ?」
「何?何?聞き捨てならね!実は今から男に会うとか?乱れた夜を過ごすとか?」
男子Aをポカリと小突きながらルナルは続ける。
「ちゃうちゃう。てか人のねえちゃんをそんな風に言うな!真面目って誤解されてるんだよねぇミズ〜は」
「君らもさ、初対面の人ってなんか敬語になっちゃわない?普通慣れるとくだけてくるんだけど。ミズ〜は人付き合いが苦手だから、というか意識しすぎちゃうのかなぁ?実はずっとその感じで緊張してるだけなんだよ」
去って行ったミヅキの後ろ姿を思いだしながらソラと男子Aは声を合わせた。
「「か……かわいい」」

ちょっと寄り道をして帰ろうとミヅキは途中下車をする。なじみのゲームショップに寄るつもりだった。ゲームショップと言っても現在、主流であるヴァーチャル世界にプレイヤー自体が飛び込むタイプのゲームを取り扱う大手量販店ではなく、小さなモニターに映し出されたキャラクターを昔懐かしいコントローラーを使い操作するようなレトロなゲームを専門に取り扱う裏通りの店である。年頃の高校生が通うには少々似つかわしくない場所にあり危険な感じがする店構えであるが、何よりも品揃えが他の追従を許さない程豊富であり、実際のところ気さくな老人が経営をしていてむしろにぎやかな大手量販店よりも心が安らいだ。
「ああ、満月さん、いらっしゃい『ザナック』入ってるよ?」
「こんにちわ、店長さん毎回それオススメしてません?」
「売れないからね〜ってどれも売れてないけどね、まあゆっくり見て行ってくださいな」
いつもの挨拶を交わし店内を物色する。陳列されたゲームソフトの中から一つ一つ手に取っては裏面を確認する。この店のゲームはすべて古くさいパッケージ販売であるがデータでは味わえない実物(リアル)をコレクトするという楽しみも含め、そこもお気に入りの一つだった。
ふと、いつだったかルナルが言っていた「ミズ〜のゲームてなんか出来る事が少なすぎる〜」という言葉を思い出す。しかしミヅキは限られた世界、限られたルールの中ではやる事がとても明確で目標に向けて没頭出来る、そんな感覚が自分には合っている気がしていた。いつも何か詰まらない事で迷っている自分にはちょうど良いと感じていた。
ルナルやソラの今日の集まりにも本音を言えば参加したい気持ちはあった。だけどもこんな自分が参加する事で場の空気が乱れることを恐れていた。その恐怖は何度も経験してきた事でその時にフォローしてくれるルナルに対して申し訳ない気持ちと、あとは少しの嫉妬と。だけども……。
「やっぱり行けば良かったかな……」
無意識にポツリと呟いてしまった。そこで我に返って視線に気づく。視線の先にはこちらを見つめる少年。独り言を聞かれた恥ずかしさから頬を染めるミヅキ。
「オ〜イ、こんな日にこんなとこに一人で居る寂しいねーちゃん?」
「さ!…寂しく…なんてない…ですけど」
しどろもどろのミヅキを制して少年。
「そのゲーム買わないなら俺が買いたいんだけど?寂しいねーちゃん?」
手に持つパッケージに目をやるミヅキ『ファンタシースター2』正直なところ買ってもいいかな?程度のモノであったが初対面の自分に対して2度も心に突き刺さる言葉を掛けてきた少年に譲るのは嫌という気持ちも上乗せされ……。
「毎度有り」
ミヅキは無言でレジに向かうと会計を済ませ少年を無視して店を出てしまった。

『自己嫌悪』なんという酷い事をしてしまったんだろうとミヅキは後悔する。たまたま図星をつかれただけで。今すぐ戻ってみようかと考える。しかし戻って、どう声を掛ける?あんな酷い事をしたのに?もう居ないかも?また酷い事をやってしまう?思考はぐるぐると周りミヅキはそこで立ち止まる。いつもこうなるのだった。
「ねーちゃん、怒ったのか?」
また背後から声を掛けられた。声で分かる、さっきの少年だった。
「そんな怒んなよ『寂しい』てのが悪かったのか?ねーちゃん寂しいかと思ったんだよ。そんな風に見えたんだよ。悪かったよ」
謝るチャンスが相手の方からやってきた。酷い扱いをしたにも関わらず、素直な言葉を持って。
「ん、悪いのは私、大人げなかった。謝るのは私のほうだね…ごめんなさい」
ミヅキは素直に謝罪すると先ほど購入したゲームソフトを差し出した。結局の所、自分で望んで一人になったはずの今日を後悔してる事に対して、八つ当たりをしてしまったせめてもの償い。
「あ、いいって。そんなことしなくてもサ。俺も言い方悪かったし、それに他の買ったし…『ザナック』てやつ」
「え?ファンタシースター2が欲しかったんだよね?『ザナック』てそれRPGじゃないけど大丈夫なの?」
「な、騙された……」

少年の名はティディス=ウィールという。余談だがこれは真司殿が付けた名前だ。年はミヅキより4つ程下であろう。しかしながらミヅキと同じレトロゲームマニアらしい。まあ店長に軽く騙されているあたりニワカなのかもしれないが。
ティディスは少年らしく「お小遣いがもうない」とのことで更にソフトを購入することは出来ず、かといってミヅキの差し出すソフトを受け取る事も気が引けるとの事であった。うなだれる姿を見て、それならばとミヅキは自分の持つプレイ済みのコレクションどれかと交換すれば良いと提案した。
「なんかそれも気が引けるけどなぁ……」
「一度やったゲームはどうせコレクションしてるだけで遊ばないから、むしろ遊んでもらった方がいいかなって」
まあとにかく一度試遊してから決めたらいいとミヅキはティディスを家に招く事にした。最初は後ろめたさもあってか感じなかったが、ミヅキは不思議とリラックス出来ている事に気付く。そして少年とはいえ初対面の相手を自分の家に招こうなどと言っている自分に驚いていた。

ミヅキの家まであと少し「1号機と2号機の合体状態が一番強いよね?3号機まで行くとデカ過ぎるし」と話していたティディスが突然話題を変えた。
「ところでねーちゃんさ、そんな奇麗なのになんで一人で遊んでんだ?」
「奇麗」という不意打ちの褒め言葉に軽く動揺するミヅキ。
「キ!…奇麗じゃない…ですし」
「そおかぁ?相当に奇麗だと思うけどなぁ、カレシ居ないわけじゃないよな?」
「カ!…彼氏なんて居ません!…よ」
「そぉか〜。なら趣味も合うし、なんか好きだしな。俺と付き合う…なんてのは…無理だよなぁアハハ」
「……マセガキ」
特に意識もしていなかった相手なのに冗談とはいえまっすぐに好意を向けられると妙に意識してしまう空気感、若いティディスに分かるはずもなく、ただ免疫のないミヅキだけが顔を赤くしていた。

「んじゃ、ミヅキねーちゃん、今日はありがとう」
ひとしきりミヅキ所有のレトロゲームを楽しんだ二人。夜間時間に差し掛かる事に加え、例年のごとく、勤勉な天候管理者による雪がちらつき始めていたため、辺りは薄暗くなっていた。そろそろと腰を上げるティディス。
「どれか持って帰らなくていい?」
何も持たずに出て行こうとするティディスにミヅキは声を掛ける。
「あ、うん。もう来れないだろうからなぁ、借りても返せないし」
「また遊びに来てもいいよ?」
「あ、てか俺さ、テラに行くんだよね、親がパイオニア4だか5だかに乗り換えるらしくていったん帰国、じゃない帰星か」
「そうなんだ……」
偶然とは言え、知り合えた人との突然の別れは寂しい。良い関係が築けそうな相手ならなおの事。ミズキの苦手なネットゲームでの別れにも似てるこの感覚。
「まあラグオルに入植が決まって、その頃には俺も大人になってるだろうからまた来てみるかな…そうだなぁ、理由はねーちゃんに会いに…なんて。俺さ今よかずいぶんと格好良くなってると思うから予約してたほうがいいんじゃない?寂しいミヅキねーちゃん?」
「そだね、『一人で寂しい』てのは確かにね。それは認めざる得ないなぁ。でもみんなには内緒だけどね」
人差し指を唇に当てつつミヅキは素直に告白した、誰にも明かせない素直な気持ちを。
「あ、でも今日だけはおかげで楽しかったよ。ありがとう、ティディス」

「くんか、くんか。なんか男の臭いがする」
門限より数十分遅れで帰宅したルナル。ソラも一緒に。両手一杯にミヅキへのおみやげを持ち、傘もささずに歩いて帰って来た二人はまるで雪だるまのよう。帰宅即お風呂行きで現在ミヅキがルナルをブロー中。
「あわわ、ミズー居ない間に男連れ込んだ?わ〜おねえちゃんが不良になった〜淫乱になった〜わ〜わ〜わ〜」
「そんなバカな!……うふふ…でもでも、そうかもしれないけどね?」
ルナルに続いて風呂から上がったソラもその言葉を聞いて叫ぶ。
「ここてお風呂大きいからいいよねぇ……ってオロチマルが不良になった〜淫乱になった〜わ〜わ〜わ〜」
ミヅキは思う、なんか姦しい。三人要らない、この二人で姦しい。
「んもぅ〜……なんだかなぁ?」
家族で過ごすクリスマスはまだまだ続く……来年はもっと色気が欲しいなぁと思いながら。

おまけ:パジャマでおじゃま
「そえば二人ってお母さん二人だよねぇ?あのとてつもなく奇麗な二人」
「そうだよ、母Iに母Mとお呼びください」
「ソラたんはどうしたら子供が出来るか興味津々さ!」
「一人がトンデモ科学の産物だからなぁ……」
「15番目のエンハンス特殊能力は精神の力を転化する力があるとか、ないとか」
「母Mの方は「願えば必ず叶う!」ってのを体現出来るらしい」
「え?てことはアレだ、願えば……アレがその……生える?」
「う〜ん端的に言えば……そうらしい」
「抱いて!オロチマル!」
「リクドーってバカ?いや私には無理」
「そりゃそうだよね」
「……ルーなら出来るかもだけど」
「まじでー!?」
「うふふふふふふふふふふ〜」
「さあ、ねよ、ねよ」

このエントリへのコメント

ザナックとファンタシースター2がプレイできるハードに【興味があります】。それはソレとしてw
ミヅキたんは 外見>メル / 内面>イザヨ 的にしっかり遺伝しておるようですなぁ。ところで〆の流れでリクドー嬢はそのまま外泊の構えなのか!?w

2011年12月16日:金曜日 | 真司

きっとフォトン科学文明の時代ではオーパーツになったハードに違いないデス。
それならきっと、ファンタシースター2とザナックが一緒に動く…筈(笑)
それはそうとミヅキちゃんの仕草が可愛いですのう、たまらんですばい。
子作りはきっとあれですよ、エロ漫画的な秘術か薬で股間に(以下自主規制)

2011年12月18日:日曜日 | 長物守

毎度こう云った話が書けるのには感心します(・▽・) それはソレとしてwゲームショップの店長はきっと任信…一応ZANACとファンタシースターIIはWiiのバーチャル~…で遊べるようでw そう言えば遠い未来的に子を産む機能がない男は居なくなるとか何処かで読んだ覚えがw

2011年12月18日:日曜日 | 寿々呂

読んでいただきありがとうございます〜
みなさま、ミヅキ所有ハードが一台とは限りませんよ?(笑)
ちなみにリクドー嬢はいつも無断外泊です(一人暮らしなので)←という設定を今決定

2011年12月18日:日曜日 | けろ

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