もはん小話:狩猟の7 哀しみの変質~ココット村~

 結局クリオはサンクと別れ単身ジャングルへと向かった。ドスランポスがココットの森に現れた事は問題であるし、しかも手負いの上に人の味を覚えてる。早急な討伐が必要になってくるはずだ。とにかく村長に知らせたほうがいいだろう。しかし先立って請けている依頼を反故にする事はしたくない、なによりジャングルにも困っているクライアントがいる事には変わりないのだ。自分とサンク、どちらがジャングルに向かい、そして残ったほうが村に戻る。現状では村に戻る事も危険がないとは言えないがジャングルでの討伐がそれ以上に危険な事は火を見るより明らかだ。共に戻る事も選択肢の一つではあったがそれはサンクをハンターとして認めていない事になる。クリオはそう判断しサンクとメルの二人で村へ戻るよう指示したのであった。

「めるめる、ほんとにダイジョブッスか?」
 まるでハンターとしての距離を比喩しているように遠くにあるクリオの背を見送りながらサンクはメルに声を掛けた。流石にこの惨状である。参っていないはずがない。幼い頃より優しく、でも少し気弱な友人が本当に心配であった。
「ん?…大丈夫だよ。大きな怪我なんてしてないし。」
 サンクの心配を他所にメルは無邪気でまるで何事も無かったかのようにクスクスと笑った。たしかに以前より見知った笑顔である。そしてたしかにその笑顔は屈託が無くとても平気そうに見える。だけど…強がりにしろめるめるはこんな場所で笑えたッスか。サンクは妙な違和感を感じずにはいられなかった。
 哀れなハンターを丁重に弔った後、装備を纏めて村へと向かうサンクとメル。ふと振り向いたサンクは血に塗れたボーンククリが置き去りにされている事に気付く。確かあれはメルのものであるはず。ハンターになった時に実の姉の店から購入し大切にそして嬉しそうに磨き上げていたシーンを何度も見ている。メルはやはり混乱しているに違いない。
「めるめる、忘れ物してるッスよ。」
 サンクはボーンククリを拾いに戻ろうと踏み出した。しかしメルは無表情で冷たく言い放った。
「…あんな弱い武器要らないよ。」
 その瞬間のメルの目を見たサンクの違和感は実感となり背筋が凍りついた。ハンターとしてそれ以前にヒトとしてもまだ未成熟なサンクにはどうすることも出来なかった。全幅の信頼を寄せ尊敬しているクリオがここに居てくれたなら今のこの状況をどう打開するだろうか。ドスランポスとの遭遇によりどこか変わってしまったメルに対して。 

 無言の帰路を経て数時間後、村に戻った二人はドスランポスの事を村長に報告し今後の対応を待った。すぐに討伐依頼書が作成され腕に自信のあるハンター達が討伐に向かう事になった。しかしサンクやメルのような駆け出しハンターは村を守るとの名目でしばらく村から離れる事が許されなかった。しかしながら結局あのドスランポスは人前に姿を見せることはなかった。村人達がドスランポスの脅威を忘れるのに半月、そしてさらに半年が過ぎた。


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