もはんP小話:捕獲の1 キモい男(仮)~ポッケ村~

振り向けば、真っ白な世界の真っ白い大地に残るのは自らの足跡のみ。雪上に小さく刻まれるその足跡すら、折しからの吹雪が少しずつ掻き消していく。しかし、目深に被ったフードより覗くその表情はどこか穏やかで、現在自らが置かれている厳しい環境もなんら障害にはなっていないようだった。吐く息は白く、凍えるような寒さ、さらに強くなる吹雪、視界一面は白く染まり、前後すら不覚、一寸先は闇…ならぬ白。それでも、ただ一人、歩を進める…。


「んじゃま、コイツらはほんとに、処分していいんだな?」
右足を少し引きずるように歩く男は、目の前に置かれた大量の武器や防具、それに様々なモンスターから狩り取られた素材をぽんぽんと叩く。ここは嘗ての英雄の村、ココット。数年前には超自然災害とも言うべき事態で、壊滅に追い込まれた事もある村だ。しかし何度目かの収穫期が巡り、その度に少しずつ復興してきた。既に壊滅前の姿を取り戻していると言ってもいいだろう。むしろ以前よりも発展しているというヒトも居るかも知れない。復興に少なからず影響を与えた小さな村の小さな武器屋、いや今は防具も同様に取り扱っているため”武具屋”と呼ぶべきだろう。その店のカウンターごしに頷く女が二人、共に少女の頃は過ぎ、少しだけ大人になったメルとイザヨイであった。
「ええよ。もう使わないし。格安で売ってあげよ。だから高く買い取ってね?」
どっちだ?と突っ込む男に、メルは軽くウインクするとくるりと反転し、店の至る所に散乱している、良く言えば、展示されている、見本の鎧や武器に目をやる。その表情は穏やかながらも少しだけ寂しそうにも見えた。
「まぁいいさね。新生活への手向け、ちょっとだけ色付けて買い取ろうかね?イザヨイ?」
店の奥から店主のナルが現れる。弟子である男に持ち込まれた全てを工房へ移動させるように言いつける。少し不機嫌そうではあるがギリギリで笑顔は見せているのが救いか。
「しっかしよ?ハンター辞めて農業始めるってのはどう言った訳だ?いや農業が悪いって訳じゃねえよ?でもなぁ俺ぁてっきりお前さんらが一番最後まで残るって踏んでたんだけどなぁ?」
フェイン武具店の筆頭作業員こと、今では防具職人となったキヨノブが目を細める。
「うふふ、あの事件の後、向かったドンドルマでも色々有りましたし?そろそろ落ち着いてもいいかなぁ〜って思いまして。」
イザヨイはいつものように心穏やかに視線を後方へ送る。ナルはその視線の先のメルを見て少しため息を付いた。
「だからって久しぶりに戻ったと思ったらいきなり全装備を買ってくれ、突然ハンター辞める…ってのはどうにも流儀じゃないよねぇ、特にイザヨイあんたのさ?」
「めるが決めたの!いっちゃんはめるがそれでいいならいいよって付き合ってくれてるだけだよ。」
割り込んでくるメルを見てナルはそんなことだろうさね…ともう一度ため息を付いた。

「キヨノブさん、ちょっと驚きました。いい腕してますよね。職人として。」
「めるもちょっと嫉妬するかも、バカアホキヨのくせに。」
ナルが買い取り査定をしている間に、イザヨイはキヨノブの作った防具を手に取るとその丁寧な縫製や他では類を見ない斬新な編み込みを見ては、ここがいい、そこがいいと細かく賞賛する。メルも一応は褒めているのだろう。
「んまぁ、まだまだだけどな〜って馬鹿言うな!」
賞賛の声にまんざらでもない表情を見せるキヨノブ。彼は村の壊滅と同じくして、ハンターとしての未来を失った後、傷を癒やすとすぐにココットに戻ってきた。ちょうど今日の二人のように自ら溜め込んだ全素材と狩りの時は常に共にあった装備を持ち込んで。ただ二人と違うのはそれらの買い取りを求めた訳でなく「工房使わせてくれ」と懇願したらしい。
「元々変な男だったけど、正直なトコ、ついに…と思ったねぇ。」
ナルは査定を中断し話題に加わる。二人の持ち込んだ品があまりに多くてちょっと査定に飽きたらしく、手に持ったティーセットは一時休憩の構えだ。
「防具作りたいってんでちょっと工房使わせてみたら、まあデタラメさね。」
やっぱり、とメルはジト目でキヨノブを見る。
「でも少し修行させてみたら、案外器用にこなすようになってねぇ。」
むむむ、とメルはもう一度ジト目でキヨノブを見る。
「この男こんなだけど、意外に努力家で、なんていうか素材の良い部分を上手に拾うセンスがあるさね。」
よせやい〜と真面目に照れるキヨノブ。正直見てるこっちがヒクわ!とメルが軽口を叩いた。
「だけどなぜ急に防具作ろうって思ったんですか?」
イザヨイはキヨノブに問いかける。ナルは何か知っているのだろう。にやにやと笑いながらキヨノブに答えるよう促す。しばらく考えていたが照れくさそうにしぶしぶ口を開くキヨノブ。
「俺ぁよ、諦め悪くてな。こんなナリでも今もハンター辞めた気はさらさらねぇ。だけどなぁ…仲間にな、まあアズやゆっきーだな、奴らに”俺”を一緒に連れて行ってもらうにはどうしたらいいか?って考えたらおのずとそうなっただけな。以上おわり。」

一瞬の間を置き、メルは満面の笑みでキヨノブの背中をバンバンと叩く。
「だから、俺様の魂の素材が!防具になって一緒に付いてく!っての?いやぁん〜キモ〜い。」
キヨノブはちゃんと分かっていた。ハンターであったメルやイザヨイにはこの気持ちを分かって貰えてることを。
「ばっか!…お前もさ、分かるだろが?こんな気持ち。だからな…。」
キヨノブは珍しく真剣な表情でメルとイザヨイにこういった。
「…分かるうちはハンター辞めるってのはどうかって思うんだけどなぁ?」

続く〜。

以下フリト
PSP新型とMHP2G買いました〜てなことでMHP小話開始〜
2話目からはもっとコミカルにする!予定!!

このエントリへのコメント

妙に格好いいキヨたんキター!男前度数二割増しでございます(笑)
一度は引退を決意したイザメルを待つのは、雪国ポッケ村なのか!?
二話以降を期待して待ちつつ、ゲームのレポもよろすくw

2008年10月21日:火曜日 | 長物守

MHP2Gは廉価版? 新型PSPいいですなあ…ウチのは一代目なのでキーがもうバカになっております(´・ω・`) まあトロステ見る分には十分ですが(・▽・)

2008年10月21日:火曜日 | けもにゅ∀

話を聞いてるとMHP2Gもやってみたいな〜という気にはなるんだけども、武器振りのあのUIが気に入ってただけに躊躇しております。でも安く手に入りそうだったら買ってしまうかも・・・あ、その前にプレイ中のディスガイア(PSP版)終わらせなきゃ(笑

2008年10月22日:水曜日 | 真司

飴すけさん>
元キヨがちょっといい味だしてるもんでつい。
ゲームレポはアレだ…まずはゲームやらな!(笑)

けもさん>
MHP2Gは中古…すいません。新型液晶が相当奇麗ですよぅ。

し〜さん>
ネコ類がいろいろといいです。猫腹筋とかオススメです。

2008年10月25日:土曜日 | けろ

確か廉価版ではネットに繋いで遊べると言う記事をどこかで読んだのです…勘違いかもしれませんがw しかし新型PSP購入でアイマスもばっちりですね!w(・▽・)

2008年10月26日:日曜日 | けもにゅ∀

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